深夜の街角にて

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グチャッ― 僕の目の前で、人の形をした黒い悪夢は頭部を踏み潰された。 勢いよく潰された黒い悪夢の肉片と体液が僕の顔に向かって跳ねる。 「うわっ!!」 反射的に飛び退く。 だが、顔に生暖かい物が当たる最悪な感触。 思わず顔を拭う。 僕は抗議の眼を黒い悪夢の頭部を潰した男に向けた。 「…少しやり過ぎじゃないですか、ジンさん。」 「こいつらにはこれぐらいでいいんだよ。」 ジンと呼ばれた男はめんどくさそうに応えた。 「ですけど…」 「チッ、しつこいぞ、ユウ!」 !! 凄みの効いた迫力の慟喝。 僕はほとんど反射的に頭を下げ謝ってしまった。 「…すみません。」 更にジンが続けて何かを言おうとした時に横からたしなめる男の声が入った。 「ジン、それくらいにしときなって。」 「チッ!」 ジンは舌打ちすると黒い悪夢の残骸の後始末をしに行ってしまった。 止めに入った男はため息をつきながら頭を掻くとが僕に言った。 「災難だったな、ユウ。」 「はい…。」 まだ顔に何かがくっついているような感じがする。 再度顔を拭った。 「前髪の上んとこに付いてるぞ。」 「え、本当ですか!?」 「………。まあ、そのうち良い事あんじゃねぇ。」 「そうですか?」 「ああ、この俺が全身全霊全力で保証するぜ。」 「…ありがとうございます、カーズさん。」 そう言うとカーズと呼ばれた男は大袈裟な笑い声を上げた。 「ハッハッハ、気にするな!」 僕は本気で気にしないでジンの方を見た。
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