吹雪

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 先が全く見えないほどの吹雪である   「どうしたもんかね…」   別に吹雪に困っている訳ではない。    ここは殺人事件の起きそうな山小屋でもなければ、様態の急変した患者を抱えた田舎の診療所でもないのだ。    ただの住宅地の中の一軒。    それでも、   「はぁ……」    憂いに満ちたため息はやまない。    机の上に並べられているのは、成績表、模試の結果、大学のパンフレット…    もう決めなくてはならないと言うのに、全く決まらない。    成績が悪いわけではない    進学する気がないわけではない    ただ、全く見えないのだ    自分の進みたい道が    自分の目指す未来(さき)が    まるでこの吹雪のように、先が全く見えない    いつ止むかも分からない吹雪の中に、今立っているのだ    ただ、いつか吹雪が止み、先が見通せるようになるときを待って
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