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「克彦…実は、俺…」
2月某日、大安。
克彦は唐突に訪れた人生の危機に直面していた。
攻撃者は親友の正輝。
非常に言いづらそうに口ごもり、ちらちらと克彦を伺っている。
緊張とは違う奇妙な汗が背中を伝う。
これは、もしや愛の告白なのだろうか
「えっと…正輝?」
「克彦、実は俺…!!」
正輝は意を決したように顔を上げる。
その目は真剣そのもの、勝負に出る漢の目だ。
克彦はその気迫に気圧されるように硬直する。
「実は俺…ズラなんだ!」
頭を覆っていた偽物を外しながら、予想とは別方向の事実を告白した。
現れた真実は、冬の淡い陽光を僅かに反射して輝く。
「はぁぁあ!?」
克彦、思わず絶叫。
「そんな大声出すなぁ!?」
その絶叫に勝るとも劣らない大声を上げながら、正輝は克彦の口を塞いだ。
あとで聞いたのだが、正輝は以前から頭髪が薄く気にしていたらしい。
そこでズラ…もといヴィックを付け始めたのだが…蒸れとバレないか心配し過ぎて症状の進行が悪化。
皆にバレる前にせめて親友の克彦だけには知らせておこうとしたらしい。
(俺…とんでもない早とちりしたな)
克彦が考えていたことは当人以外知らない
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