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帰宅した仁の目に飛び込んだのは
「なーん」
子猫を抱えたいとこだった。
「仁兄のとこでこのこ飼っていい?」
おそらく人生で一番無垢で可愛らしい年のいとこは、その小さな腕をいっぱいに伸ばして俺に猫を近づける。
なーん、と子猫が機嫌良さそうに鳴く。
「…ダメだ。自分の家で飼え」
一瞬二つ返事で許可しそうになるが、なんとか踏みとどまった。
仁が今住んでいるのはペット禁止のアパート。飼える訳がない。
更に、バイト代も安いため、金銭面でも猫を買うほどの余裕がない。
頭の中で結論をだしながらひとりと一匹の横を通り過ぎようとしたら、
「仁兄~」
「なーん」
右足にいとこ、左足に子猫がすがりつく。
チクチクと良心が痛むのは錯覚、絶対に錯覚だ。
トドメを刺そうと息を吸いながら振り返る。
しかしそこに待っていたのは、カウンター。
「お・ね・が・い」
「なーん…」
泣き落としのダブルアタック。
結局仁がおれてしまったのは言うまでもない。
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