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「むぅ」
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彼女は学級日誌を睨みながら思わず唸った。
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普通その日にあったことを書くべき欄に、このクラスではその月事に出されるお題に沿った事を書かなければならないという厄介なルールがあった。
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今までのお題は「今年度頑張りたいこと」や「生きてて良かったと思った瞬間」など、比較的どうとでもなるお題だったのだが、
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「今回に限って何故「愛とは何か」なんだろ…独身担任のイヤガラセ?」.
思わず毒づきながらボールペンを意味もなく回す。
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他の担当者が書いた文はノロケや趣味への情熱、家族やペットの事。
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「なんか何書いても二番煎じな気がしてきた……」
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ならば思いっきり遊んでやろう。
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開き直りに近い考えが彼女の頭に浮かび、止まっていたボールペンを紙に滑らせた。
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『愛とは世界で一番ありふれた感情である
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恋と違い老若男女や人間以外、実体の無いものにも向ける事ができる
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そしてまた、世界を作り上げてきたエネルギーでもある
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全ての歴史はその時々の人間同士の愛、全ての物は仕事への愛、私たちは両親の愛より生まれたのだから』
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