最終章 最初の一歩

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 こちらから行けないのなら、手段は一人つしかない。 「み、ミーナ。喉が渇いた」  旬はとりあえず大声を出したつもりだが、ロビーにすらこだまさない。  風紀委員の女子は、旬の奇行を怪訝そうに見る。  今一つ羞恥心が邪魔して大声を出せない旬は、一度深呼吸して気持ちを改める。  どうせ明日には学園を出る身なのだから、今更奇行の一つや二つ気にしても仕方無いのだが、そんな度胸があったとすれば、旬はもう少し上手く立ち回っているはずである。 「ミーナ! 喉が渇いた!」  再度声を出す。喉など渇いていないのだが、「ごめん」を大声で言うなど今の旬には厳しすぎる。それに、一応の照れ隠しなのだ。 「き、気でもふれましたか」  風紀委員の女子は困惑しながら旬を見る。  すると旬の声が聞こえたらしく、階段から野次馬が少しずつロビーに降りて来た。  自爆だった。  衆人環視され、旬はついにやけになってしまう。 「ミーナ!! 来い、いや、もう来てください!!」  旬はそう言うと天を仰いだ。
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