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ここに居ることが仕事なんだよ』って。
だから、私もここでお仕事してるんだ」
城遣えしている小十郎は、その意味がすぐに解った。
『人質なんだ。このこ…』
手を固く握り締め、必死に泣くまいと堪えている女の子。無理矢理作った笑顔がまた、痛々しい。
「そ、そうだ。これから一緒に遊ぼうか?」
「ホント…?」
「ホント、ホント!荷物置いてくるから、待ってて!」
なんて声をかけたら良いのか解らなかったのだろう。 ただ、泣かすまいとした。泣き顔を見たくは無かったのだろう。
石段を駆け上がり、境内の中にある自宅へと駆け込む小十郎。
「只今戻りました!」
「どうしたの小十郎。そんなに慌てて」
「これから少し、遊び相手してきますので!」
荷ほどきもロクにせずに、また、外に飛び出していく小十郎。
石段に顔を向けると、さっきの女の子が上って来ていた。
「すぐ、行ったのに…」
「お兄ちゃんに早く会いたくて、来ちゃった」
嬉しそうな顔を小十郎に向け、手を握ってくる。
「遊ぼ」
にっこりと笑い、近くの原っぱまで駆けて行く。
可愛らしい容姿とは違い、相当活発な女の子。話を聞くと、他の兄弟は全員男らしい。
「名前はなんていうの?」
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