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伊達と武田がぶつかった戦。勝敗つかず。と見たのか、引き上げが始まっていた。
武田の殿を任されているのは、赤い具足に身を包んだ女性。…いや、女性と言うには少し幼いかもしれない。
外側に跳ねている短い髪、赤い具足、使い馴れている様子の得物の十文字槍…武田の殿を任されているのは、真田幸村。
一方、伊達の殿を任されているのは、金髪が印象的な側近、片倉小十郎景綱。兜は紐を切られてしまったのか、被ってはいない。
十五年振りの再会。共に殿を任された身。上がった息。紅潮した顔。昔と変わらない姿。
小十郎は一瞬の内に恋に堕ちた。
十五年前に会っていたことなどすっかり忘れ、得物を小十郎に向ける。
場の空気が張り詰める。 幸村に習う様に、小十郎も槍を持つ手に力が入る。
「…推して参る!」
「来い!」
間合いを詰め、槍術の攻防が始まる。戦場に響き渡る金属音。幸村が素早く連続で突いてきたかと思えば、小十郎は全て防ぎきり、幸村の膝上の高さで払ってくる。
激しく打合をしていたかと思えば、また、距離を置き、呼吸を整える。
「強いのね…」
「それほどでも…」
静まりかえり、互いの行軍の音が響く。周りには体を引きずる歩兵の姿、
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