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武田との戦から数週間。小十郎は幸村の事が忘れられないでいた。覇気が感じられず、目も少し虚ろだ。
自室に戻ると、空を見上げ、暫くしてため息をつく。何かをするわけでなく、ただ、ずっと空を眺めている。
そんな小十郎の様子を廊下から覗いている人影が二つ。伊達政宗と伊達成実。普段とは違う様子の小十郎が気になるのだろう。
「あやつは大丈夫か?武田との戦からずっとあんな感じではないか」
「珍しいですよね。小十郎のあんな姿」
障子の隙間から、部屋を二人で覗いては、ひそひそ話す。
「…好きな人でも出来たんですかね…」
「…好きな人か……武田にか!?」
成実の思い付きとも言える言葉を真に受けた政宗は、思わず声を上げてしまい、それに慌てた成実は反射的に政宗の口を手で塞ぐ。
「しいぃーっ!!声が大きいですよ!」
「貴様の声がデカイのだ!馬鹿め!」
こんな調子の口論をしていたら、小十郎は気付かない訳がない。
いきなり、すっと、二人が居る場所の障子を開け、二人の事をじっと見る。気分を害された。そう言いたいらしい。
「このような場所で、何をなさっていられるんですか?」
ただならない雰囲気が小十郎から出ている。固まってしまう政宗と成実。
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