幼い事情

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優斗と綾斗は、微かに振動する車の中、お互いに肩を預けるような形で眠っていた。 親は引っ越し業者がトラックから家具を下ろすのに指示を出している。 新たな彩咲家の住居になる所は、閑静な住宅街に建てられたクリーム色の家だ。前に住んでいた住人が家族そろって海外へ移り住んだ為、長い間無人になる家を借りたのだった。 ガチャリ、と双子の乗った乗用車の扉が開かれる。 「優斗、綾斗、お家入るぞ」 「…んぅ……」 「…ん~…」 父親の声と大きな手に軽く揺さぶられ、双子はゆるゆると瞼をあけた。 一通り家具を運び終わった家の中は、アチコチに段ボールやら大きな梱包やらが置いてあり、幼い双子には何やら迷路のような面白い遊具のように思えた。 「あやー!かくれんぼ!」 弟の優斗がキッチンの方へと駆けていく。冷蔵庫と思われる大きな青い箱の後ろに身を隠し、綾斗を除くように顔を出した。 綾斗が優斗の方へ踏み出そうとした時、後ろから母親の声がかかった。 「二人とも~お隣さんに挨拶しに行くわよぉ」 二人は顔をお互い見やってから、直ぐ様母親のもとへと駆け寄りそれぞれの定位置である、優斗は左側、綾斗は右側へと母親の腕に自分の腕を絡めた。
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