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突然の制止に俺はその場でたたらを踏んだ。
俺は思わず声のした方を向いた。
目の前に高温を放つ赤い球体が迫っていた!
俺は咄嗟に尻もちをついて火の玉を避けた。
髪の毛が焦げる、ジュッという音と共に、嫌な匂いが広がった。
火球は俺の頭上を通り越しゲルに直撃した。
炎がゲルを包み、一瞬で奴らを焼きつくす。
沸騰したかと思ったらすぐに蒸発し、跡形もなく消えてしまった。
「情けないな。明人様のご子息と聞いていたから期待していたのだがこの程度か・・」
俺の前髪を焦がした原因を作った奴が、言いながら近づいてきて手を差しのべてきた。
長身ですらっとした体型。
髪は肩まであり、見るからにサラサラな銀髪。
目は切れ長で、その意思の光をしっかり宿している。
一見冷たそうな印象を与えるが、顔自体は美形と言っても申し分ないだろう。
「和泉アキヒトは確かに俺の親父だけど・・」
俺は手を借りず、自分で立ち上がった。
「仮にも“暁の聖騎士”と呼ばれる御方の息子であるなら、もっとしっかりするべきだな」
「暁の聖騎士?」
また知らない単語が出てきた。
本当に同じ言語を喋っているのか?
俺の困惑を察したらしく、銀髪野郎がさも面倒くさそうに説明し始めた。
「我が国において、騎士に贈られる最高位の称号、それが“暁の聖騎士”だ。それと、頭の中とはいえ人の事を銀髪野郎などと呼ぶのはやめてもらいたいな」
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