chapter.1

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何か重いものが動いたような音がした。 今思えばこの時振り返らなければよかったのかもしれない。 だが俺は振り返ってしまった。 マンホールの蓋が動いている。 通り過ぎた時はちゃんと収まっていた蓋がずれていたのだ。 「なんだ?」 俺は近づいてみた。 若さゆえの知的好奇心というやつだ。 ドンッ、という鈍い音と共にマンホールの蓋が3m程舞い上がり、轟音をたて地面に落下した。 「えっ!?」 目の前で起きた現象に思考がついていかない。 マンホールの蓋というのは簡単に持ち上がらないようにかなり重く作られている。 それがいとも軽々と舞い上がったのだ。 さらに信じられないことに・・ 「あ~!!和泉晶君だよね?やっと見付けたよ!」 やたらとテンションの高い女がマンホールから出てきた。 少なくとも俺は下水道にはいないと思うが。 「晶君のお父さんから依頼を受けて晶君を迎えに来ました~」 「は?」 当然だが俺には父親がいる。 正確にはいたと言った方がいいかもしれない。 2年前、俺が14歳の頃に急に失踪している。 朝、仕事に出たまま帰って来なかった。 原因は不明。 あの屈強を絵に描いたような親父が誘拐されるとは思えないし、まさか謎の組織に消されたなんてこともないだろう。
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