898人が本棚に入れています
本棚に追加
当たり前だ。
突然マンホールから現れた怪しい女の話を真に受けるほど俺は馬鹿じゃない。
というより何を言っているか理解できない。
自分が見たことないものは信じないという訳ではないがさすがに限界がある。
そんな俺を横目に怪しい女は考え込んでいる。
どうやって俺に説明しようか悩んでいるようだ。
「わかった!」
突然女が叫んだ。
「“百聞は一見にしかず”だね☆晶君のお父さんに習ったんだよ♪」
とてつもなく嫌な予感がした。
昔からいい予感はまったく当たらないが悪い予感はことごとく当たる。
早めに立ち去った方が良さそうだ。
俺は方向を変え逃げ出そうとしたが・・
怪しい女は素早く俺の腕をつかんだ。
マンホールの蓋を弾き飛ばすほどの腕力を俺が振りほどける訳がない。
「じゃあ行くよ~☆すぐ着くからね!」
言いながら彼女は白く輝く石のようなものを取り出し手のひらの上に乗せた。
彼女を中心にふわりと風が起きた。
ふいに石が浮き上がり粉々に砕け散った。
「!?」
手品でも見ているようだ。
物理法則を完全に無視した現象が俺の前で起こっている。
砕け散った石の欠片が風に乗って、彼女と俺の周りを回っている。
石の欠片は砕けても、それぞれが白く幻想的な輝きを放っていて、不覚にも俺はそれを綺麗だと思った。
彼女が静かに言葉を紡ぐ・・・
“時空を司る風の乙女達よ。我が祈りに応え、次元の扉を開き、我を彼方の世界へ導きたまえ”
俺の視界を光が満たした・・・
最初のコメントを投稿しよう!