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ただ、興味はあった。母が嫌がった名前を私に付け、親戚たちから変人扱いされている祖母を見てみたいという気持ちはあった。だからわざわざこんなところまで出てきたのだ。小さなお寺で行われた葬式だった。今となっては誰が死んだのかは忘れてしまったが、喪服を纏った祖母の美しさだけは覚えている。刃物のような冷気が祖母の凜とした美しさを際立たせていた。私は祖母がこれほどまで美しいとは思わなかった。すると祖母は私の視線に気付いたのか、こちらを振り向いて言った。 「菫かい?」 祖母は葬式にも関わらず、大きな声で言った。私は少し戸惑いながらも大きな声で答えた。 「はい。中3になりました。」 祖母は顔一面に桔梗のような笑顔をつくり、こう言った。 「あんたは若い頃のあたしにそっくりだ。二代目のあたしだね。」 私はこれを聞き、自分も祖母のように美しくなれるのだと思うと心が踊った。そう、私は二代目の祖母なのだと。
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