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シュッ…シュッ…
シュッ…シュッ…
「♪♪♪」
綺麗な鹿の木彫りが完成した。
「できた…」
この悲しみにも似た喜びをアキは小刻みに震えながら噛み締める。
コンコン!
「はい…!」
倉庫の壁の隙間から、僕の許婚(いいなずけ)の[ティファ]が覗いていた。
ティファ「アキ?また閉じ込められたの?お腹空いてない?」
声だけでもティファの心配しているのがわかる。
「ティファ…ぅうん、心配しないで、お腹は空いてないよ。」
「でも、心配だわ。」
ティファはごそごそとポケットから取り出す。
「はい…」
壁の隙間からチョコを渡す。
「ありがとう。…前閉じ込められたのは20日前か。」
チョコを少しずつ食べながら呟く。
「今日は何だったの?」
「水くんでる時、つい滝に見とれちゃって。母さんの声が聞こえなかったんだ。」
「おじさまとおばさまは気性が激しいもんね…。私と結婚したら私の家に来てもらうように頼んであげる。」
ティファは壁の隙間からウインクをした。
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