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ミッドチルダの首都。
クラナガン郊外の住宅街に八神はやて空佐の自宅はある。
近代的なミッド式建築が主なこちらの世界では珍しい地球建築。
しかも日本式だ。
海鳴の家とは違った純和風な作りはそれこそどこかの武家屋敷といった感じだ。
そんな、ミッドでも珍しい八神家の縁側に一人の女性が腰かけていた。
白い浴衣とそれに輪をかけて白い肌。
整った顔を作り上げる紅い瞳。
髪は透き通るような銀髪で、その顔立ちも合わせて、明らかに日本人のものではない。
彼女の名はリインフォース。
八神はやての守護騎士である。
本来なら消滅を迎えるはずだったのだが、様々な奇跡をへて、今もこうして、愛する主と共にあることが出来ている。
「リインフォース。ここにいたか。」
ふいに声が聞こえた。
高さからして女性。
優しさと気高さを併せ持つ、美しい声だ。
そのような美声の持ち主は、彼女の知る中には、一人しかいなかった。
「ああ、烈火の将か。」
振り向いたリインフォースの瞳に、一人の女性が映された。
鋭く研ぎ澄まされた目は、その意思の強さをまじまじと感じさせる。
燃え盛る炎のような緋色の髪は、その激しい気丈を現している。
今日は珍しく、その絹のような艶髪を腰の辺りで流していた。
彼女の名はシグナム。
八神はやてに忠誠を誓った四人の騎士。
ヴォルケンリッターの将を務めている。
「主はやてがお呼びだ。食事ができたそうだ。」
「そうか。もうしばらく涼んでいたいが、主の指示というならば仕方がない。」
リインフォースがゆっくりと立ち上がった。
「では行こうか。」
「ああ、それとリインフォース。」
「なんだ。」
「私のことはシグナムと呼んでくれといったはずたが?」
シグナムがからかうような口調でいってきた。
烈火の将とも呼ばれるこの剣の騎士は親しい人間ををからかう癖があるようだ。
虚を突かれた質問にリインフォースは開いた口が塞がらない。
が、その顔もすぐに苦笑いへとかわった。
「すまんな。こちらの名に慣れすぎているだけだ。いずれ直るさ。今は許せ。」
シグナムの顔がその答えは予想していたさと言わんばかりの笑みに包まれた。
「まあ、その気持ちはわからんでもないが………それともう一つだけ聞いても良いか?」
「ああ、なんだ?」
シグナムから返ってきた言葉は予想外の物だった。
風と烈火(前)Fin.
Next.Act風と烈火(後)
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