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「誰だ」
言われるが早いか、ヘンゼルはグレーテルを連れて駆け出しました。
ロープを伝って家に、とりあえず家にいこう。
そうすれば何も知らない時の僕らで居られる。
ヘンゼルは爆発しそうな心臓を躍らせ、ロープを探します。
無い
無い無い無い
ロープが無い!
「捜し物はこれか?ヘンゼル」
背後から声が聞こえたかと思うと、チカッと視界が白くなりました。
殴られたのです。
「へ、ヘンゼ…」
叫びたいのに声が出ないグレーテルも、背後から羽交い締めにされました。
酒屋の主人でした。
「グレーテル、逢いたかったよぉ、早く『お菓子の家』にいこう」
そう言ってグレーテルの胸をわしづかみにしました。
「つっ…」
痛さにグレーテルの声がもれます。
「おまえらはな、実の親父に売られたんだよ!」酒屋の主人が嬉しそうに言いました。
多分サドシズムなのでしょう、嬉しそうに言います。
その言葉はヘンゼルにもうっすら聞こえていました。
「と…父…さん…」
声を絞り出すと、父親は樹木から回収したと思われるロープで、ヘンゼルの手首を縛り始めたのです。
「お前ロープ探してたんだろ?見つかって良かったな」
「だ…やめ…」
普段気丈なヘンゼルも、あまりにも非日常的な光景に頭が働いてません。
2人はお菓子の家に引きずり込まれました。
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