189人が本棚に入れています
本棚に追加
むせかえるような匂いの立ち込める家でした。
甘ったるいシロップのような、頭がクラクラになる匂い…
この家、変な草をいぶしてる―――!
経験の無いヘンゼルにも何となく分かりました。
この家の中は、薬漬けになっているのです。
甘ったるい匂いは草と、シロップと、情交の液の匂いでした。
何人かが周りでうごめいているのは、おそらく…
手首をロープで戒められたヘンゼルが、ドサッと床に投げ捨てられました。
「これ息子か?なかなか綺麗な面してるじゃあないか」
男達が体を服越しにまさぐる感覚に、ヘンゼルは頭が混乱しました。
「僕はおと…!」
「…男だからなんだ?」
ヘンゼルは、青ざめていく自分が第三者のような感覚で分かりました。
あの行為は、男女で子供を授かるための愛の契りじゃあないの……?
そんな考えがふと頭をよぎりましたが、クラクラした脳髄が体を敏感にさせます。
「いや…だ…いや…ガフッ」
「うるさいな」
口にゴワゴワした何かが突っ込まれました。
出てくる時に携帯したパンでした…
最初のコメントを投稿しよう!