貧しい一家に…

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「早く枯れ枝を拾ってこい!」 父さんの怒号が響く。 グレーテルはビクッと体を震わせ泣いている。 いつものうちの景色だ。 暴力と酒にまみれた父さんは、世間的には『良くない』父親かもしれない。 でも酔っ払って機嫌の良い時の父さんは、僕たちの大好きな、世界一の父さんになるんだ。 ー酔っ払ってほしいー それだけを考えて、僕たちはせっせと言うことをきく。 木こりだった父さんの代わりに、僕が斧をふるう。 稼いだちっぽけなお金でグレーテルが酒を買いに行く。 酒をじゃんじゃん注ぐ。 酔っ払った父さんがこうして出来上がるの。 僕たちも嬉しい… 頑張った甲斐が報われる、至福のひとときなんだ。 斧で足の指を切断しちゃった僕も、 酒屋さんに体を触らせて酒代をサービスしてもらってるグレーテルも、 この時が一番うれしい
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