貧しい一家に…

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「もう秋か…」 ヘンゼルが言った。 私はうん、と適当な相づちをしてトボトボと歩いた。 兄さんは足の指が一部無い。 斧を使い慣れていない頃に無くしたの。 最初は悲しかったけど、そうも言ってられなくなったの。 私は酒屋の主人に体を売っているの。 本当はいや、イヤなの… でも、酒代も馬鹿にならなくて、私は主人の提案に乗るしかなかった… そう、それしか無かったのよ… 「秋になると森が黄昏て、きれいだね」 「うん」 「おまえ、肌寒くないかい?」 「うん」 グレーテルは極端に言葉が少なくなった。 酒屋さんに通い始めてからだね。 でも僕は、知ってても「止めろ」とは言わないんだ。 悪いお兄さんだよね。 でも、僕たち…父さんが好きだろう? 売れる物は売ろう?
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