5人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
俺は今、32歳。
独身。
フリーターだ。
主な収入源は、週に二度のバイトと、ジャグラーだ。
因みに彼女はいない。
つーか、特定の彼女がいない。
昔、本気で好きになった娘はいたが、今の自分の収入では、彼女に惨めな想いをさせてしまうので、自分から身を引いたんだ・・・
そうやって、いつも自分自身に嘘を付き続けて、はや32年。
秋田のハローワーク管内での求人倍率は、約60%。
内、国家資格などの無い自分のような人間は30%弱と云う辛い現実を目の当たりにして、職安の隣のパチンコ屋のブルーリボンに、今日もジャグラーを打ちに行く。
俺の台選びは、基本レギュラーに偏った台を選ぶんだ。
しかし、今日もブルリは求職者で溢れかえっている・・・
因みに、ジャグラーのシマは2つ。
しかし、空いている台は数台しかない・・・
今日は、だめか・・・
と、その時、スーツを着たサラリーマン風の男性がおもむろに声をかけて来た。
『これ、やりませんか?』
B3、R12、総回転数994回、34Gヤメ☆
なんて素晴らしい台!
あ、ありがとう・・・
普段、会話をし慣れていないせいか、直ぐにドモる。
直ぐに赤面する。
その、北村一輝似の男性は、ニヒルな笑顔を浮かべ無言で去って行った・・・
まるで、医龍2のエンディングのように。
上唇の形がヒジョーにセクシーだ。
さぁ、今日もコイツで稼がせて貰うぞ!
ホール内をうろついて集めた8枚のメダルに魂を込めて、勢い良くホッパーに手を掛けた。
神様・・・
御願い致します・・・
ガシャ!
自分はもっぱら逆押しだ。
昔から逆押しだ。
人と同じ事をするのがキライだ。
つまり、天の邪鬼だ。
でも、4号機の猪木自身だけは、ちゃんと順押しした。
でも今は5号機だ。
ジャグラーだ。
どうでもいい。
今はただ、早く自立した生活をして、親に迷惑をかけない生活をする為だけに、ジャグラーを打っている。
本当は弁護士になりたかった・・・
本当に困っている人の為に、お金の為でなく、命を張った仕事がしてみたい。
早く、人の役にタチタイ!
工業高校中退だけど。
車の免許しか無いけど。
そんな事を考えながら、僕は逆押しをするんだ。
明日と云う希望に向かって、逆押しをするんだ。(クドイ)
最初のコメントを投稿しよう!