第2章【落下】

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地面に足がつかない。ふわふわした感覚が僕を襲う。それは子供が憧れるピーターパンの飛行ような、そんな夢のあるものでは全くなかった。なぜならば、僕は子供でもなければティンカーベルの魔法の粉もかかっていないからだ。ただ、落ちるだけ…そう理性が感じ取ってしまうからだった。 僕はそっと地面を見下ろした。着地点を選べばうまい具合に助かるかもしれないからだ。しかし、その希望も儚く消えていった。僕が落下するだろう地点はコンクリートだったからだ。僕たちが中学生だったときはちゃんと土で、植物なんかがいっぱい生えてたのにな…そう思った。確かに雑草なんかの手入れは面倒ではあった。一年最後の大掃除では裏庭の雑草取りをやらされたことがあったっけ。最近は子供の数も減ってきたし、業者に頼むのもコストがかかる。だから地面をコンクリで埋めてしまったのかもしれない。 そんなとき、ふと僕の頭には疑問が浮かんできた。 なんで落ちないんだ? いや、実際には落ちていた。しかし、思った以上に長い。この学校は四階建てだから…地面へつくまで精々5秒がいいところだろう。それにも関わらず、なかなか地面にはつかないのだ。
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