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その事件からとゆうもの、二人の距離はいっそう縮まっていた。高校でもよく話すようになったし、二人で映画にも行くようになっていた。琴実と一緒にいることはとても居心地が良いものだったのだ。しかしそれが恋心なのか、単なる友情なのかは未だに判別できずにいた。ただ、こんな楽しい時間が一生続けばいい、そんなことばかり考えていた。
ある一年の夏も終わりかけた8月の夕方のことだ。高校の文化祭の準備が終わり、琴実との下校中であった。
『ねぇ…』
なんだ?
少し張りのない声で、しかしゆっくりと小さく話し始めた。
『私たちって…なんなのかな?』
なんなのだろう、正直僕にはわからなかった。僕は黙っていた。
『もぅこんなダラダラした付き合いは嫌なの。もぅ、はっきりしない?』
僕はただうなずいた。本当ならば、僕はもう少しこの事はうやむやにしておきたかった。もう少し?…いや、僕はずっとこんな関係を続けたかったのかもしれない。
しかし、そんなことを彼女に言えるはずもなかった。
『私達…恋人なのかな、それともただの友達?』
僕が黙って頭を回転させている間にも、琴実は核心をついてきた。僕は決断を迫られていた。
『好きだ』
僕の口から出た言葉はこの一言だった。彼女は顔を赤らめて『私も』と言った。
辺りは夕焼けでオレンジ色に染まり、彼女の頬はより赤く染まった。逆光の位置にいた僕は、影で顔が真っ黒になっていた。
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