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『好きだ』
この言葉はただ僕にとって琴実との関係を繋ぎ止めるための手段となる言葉でしかなかった。
僕はやはり琴実を好きではなかったのかもしれない。しかし一晩経っても二晩経っても結論を出すことはできなかった。
僕は琴実を好きになろうと思った。
これによって僕の高校生活はなにも問題がなかったかのように…、気が付いたら冷たい風の吹き抜ける冬になっていた。
付き合い始めてからもぅ4ヶ月になったが、依然として付き合う前とはなんら変わらない日々を送っていた。
『ねぇ、クリスマス、どこ行こうか?』
琴実は突然言った。
あぁ、そうだ、あと5日でクリスマスだもんな。
『それに、その日は私達にとっても大切な日だもんね!!』
彼女は嬉しそうに言う。しかし僕にはクリスマス以外にどんな日であったか思い出せずにいた。
『忘れちゃった?』
ぅん…、ごめん。
僕は小さくうなずいた。
『まったく、24日は付き合い始めて四ヶ月目の記念日だよ、しょうがないなぁ、健次は』
明るい口調で話していた琴実だったが、瞳は涙が溜まっていた。
『そ、そうだったな!!それは盛大に祝わないとな。な、なんなら…ウチに来るか?』
彼女は潤んだ目で僕を見ていた。
『ほ、ほら、クリスマスは二日とも旅行で親がいなくてさ、誰も家にいないんだよ』
『いいの?』
『あぁ、クリスマスはずっと一緒だ。』
そう言って僕は強く抱き締めた。これでよかったのかはわからない。でも、僕の心に空いた大きな穴を埋めるには良い機会だったし、それが必要だと思ったのだ。
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