第4章【箱 その1】

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ピンポーン ドアベルが鳴る。扉を開けるとそこには2つのビニール袋を下げた琴実の姿があった。 『お、いらっしゃい!!』 『へへぇ、ちょっと気合い入れて買い物してきちゃった』 彼女はそう言って嬉しそうに笑っていた。僕に手料理を振る舞うことを楽しみにしていたらしい。彼女は料理が得意だと言うが、日頃の不器用さからか全く想像がつかなかった。 『おぃ、本当に大丈夫なのか?』 『大丈夫だから!!キッチンに入ってこないでねっ』 琴実がそういうので、僕は居間でテレビを見ているしかなかった。 ずっと見ていたクイズ番組が、音楽番組に変わろうとしている頃のことだ。 『おまたせ』 そう聞こえると、琴実は御盆にいっぱいの料理を持って居間に入ってきた。 薄くスライスされたフランスパンに、柔らかく煮込まれたビーフシチュー。それに色鮮やかなコーンツナサラダ。すべてが申し分なかった。 『ごめんね、こんなものしか作れなくて…』 『全然、凄く美味しいよ。』 『ありがとう…』 琴実は頬を染めた。僕のお腹も、そして心も完全に満たされた瞬間だった。 そして二人はベッドに入った。
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