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ピンポーン
ドアベルが鳴る。扉を開けるとそこには2つのビニール袋を下げた琴実の姿があった。
『お、いらっしゃい!!』
『へへぇ、ちょっと気合い入れて買い物してきちゃった』
彼女はそう言って嬉しそうに笑っていた。僕に手料理を振る舞うことを楽しみにしていたらしい。彼女は料理が得意だと言うが、日頃の不器用さからか全く想像がつかなかった。
『おぃ、本当に大丈夫なのか?』
『大丈夫だから!!キッチンに入ってこないでねっ』
琴実がそういうので、僕は居間でテレビを見ているしかなかった。
ずっと見ていたクイズ番組が、音楽番組に変わろうとしている頃のことだ。
『おまたせ』
そう聞こえると、琴実は御盆にいっぱいの料理を持って居間に入ってきた。
薄くスライスされたフランスパンに、柔らかく煮込まれたビーフシチュー。それに色鮮やかなコーンツナサラダ。すべてが申し分なかった。
『ごめんね、こんなものしか作れなくて…』
『全然、凄く美味しいよ。』
『ありがとう…』
琴実は頬を染めた。僕のお腹も、そして心も完全に満たされた瞬間だった。
そして二人はベッドに入った。
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