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『…ヒヒヒ…どうでした?初めての走馬灯体験は…』
気が付くと元の世界へ戻っていた。そこにあるのは全てを包む闇と奇妙に笑う光だけだった。
『嫌なものを見たな』
僕は言った。
こんな記憶なんて早く消し去ってしまいたかった。よって僕は今の今まですっかり忘れていた。しかし走馬灯はそれを覚えていた、…いや、僕の頭のどこかにそれはずっと存在していたのだ。
『記憶とはもろいものです。一年もあれば直ぐに改ざんできてしまう。あなたにとって琴実さんとの思い出は、とっても美化されたものになっていたんじゃないですか?ヒヒヒ…』
確かに、『若気の至り』の一言で片付けてみたり、『お互い良い思い出だった』なんて琴実のことまで勝手に決めつけてたりしたな。今になるまで琴実がどんな気持ちだったろうなんて考えなかった。
『まぁまぁ、人間なんてそんなもんです。そうじゃないと人間は生きられない生き物なんですよ。忘れることで生活を快適にしているんです…』
しかしこればかりは理解していいものか、僕は少し苦しんだ。
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