第5章【箱 その2】

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目を開けると、そこには大きなサッカーボールがあった。 『あなた…この子に大人用はまだ早かったんじゃないの?もぅ…』 母は僕とサッカーボールを見比べてはため息をついた。 『いいんだよ、小さい頃から慣れておいた方がいいんだ。健次は未来のJリーガーなんだからな!!』 親父は無責任にもそんなことを言って笑った。 僕は小学一年生、初めてサッカーボールを触ったのがこのときだった。なぜ親父がサッカーボールを買ってくれたのかはあまり覚えてはいないが、走馬灯によれば僕はテレビで放送しているJリーグの試合を幼稚園児の頃から見ていたらしい。鹿島アントラーズがめっぽう大好きで、得点を入れるととても喜んでいた。 そんな僕にサッカーをやらせようと父が思ったのも無理のない話だった。
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