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「せ、先生、焦らさないでください! どうなんですか? 僕の体は!」
「うーん、それが……とても難しいんだが」
「だ、だから、焦らさないでぐはっ!」
左手の甲がピキリと痛む。
このヤブ医者め、医師連盟に訴えてやる。僕は左手の甲の痛みに耐えながらそう決意した。
「あぁすまん。では診断の結果を率直に言うよ。君はある種の『特異体質』だ」
「それはどんな」
ある程度めぼしは付いているが、一応聞いてみた。
「脳内が緊張状態になると、骨が局部的に脆くなり、骨折してしまうんだ」
「うう、やっぱりそうですかうぐっ!」
医学的裏付けを得て、僕はさらに強い不安に襲われた。
そして今ので、おそらく左手の薬指がやられた。
「残念ながら、今の医学では君を救う手段はない」
「そんな、あなたは医者でしょう! 何とかしてください!」
「無理だ。どうしてもというなら、科学者にタイムマシンでも造ってもらって、未来の病院に行ってくれ」
「無茶苦茶なことを!」
「冗談だ。ただ、今の時代に君を治す事は、今の時代にタイムマシンを造るのと同じくらい困難な事だと、そう言いたかったんだよ」
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