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それから僕は、中学校、高校、大学を無事に卒業し、社会人になった。
社会人は思ったより大変だった。
僕は学生時代、恋人はおろか友達すらまともにいなかったし、作ろうとも思わなかった(もちろん、さっきの事件が影響しているのは言うまでもない)。そしてそれが災いしてか、僕は人付き合いというものに驚くほど免疫がなかった。
社会というのは、気が合う人間や優しい人間ばかりがいるわけではない。
出来れば付き合いたくないような人間とも、何とか協力して仕事をこなさなければならないのだ。
僕にとってそれは恐怖の連続だった。
そして次第に体調が悪くなり、仕事もうまくいかなくなってきた。
もちろん、骨折によって。
それが、『これはおかしい』と真剣に思い始めたきっかけだった。
あと一応、語弊がないように説明しておくと、一言に『骨折』と言っても、それには様々な種類がある。
僕の体に発生するのは、ほとんどが『亀裂骨折』と呼ばれる、骨にヒビが入る骨折で、何とか我慢すれば生活にそれほど支障はない(痛い事に変わりはない)。
バーゲンセールみたいに気前よくポキポキ折っていたら、今頃僕は死んでいるだろう。
でも先生は『緊張が強ければ骨折もひどくなる』と言っていたし、油断は出来ない。
ひょっとしたら、真っ二つに『ポキリ』といってしまうような、とてつもない緊張に襲われる事だって、あるかもしれないのだ。
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