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「ワレのせいで逃げられたやないか。どないしてくれるねん」
「どないもしませんよ。だって僕は、何も悪い事なんかしていない」
女の子に貰ったほんの少しの勇気と、殴られた怒りのおかげか、僕はもうそれほど恐怖を感じていなかった。
「なめくさっとんちゃうぞ! ボケが!」
チンピラは何と、懐から拳銃を取り出した。僕はわずか3秒で恐怖を取り戻した。
「あわわ……!」
もうなりふり構っていられるもんか。女の子はもういないし、格好なんか付けなくていい。僕は必死に命乞いをしようとした。
「わ、私が全て悪いせぶっ! どうか命だぎっは助けくふぅ!」
緊張しすぎてうまく言葉が出ない。
「死にくされっ!」
もうダメだ。
僕は死ぬ。
いや、死にくさる。
そう思った時だった。
『ポキリ』
情けない音を立てて、右足のスネが二つに折れた。
支柱を失った僕の体は、糸の切れた操り人形みたいに、地面へ崩れ落ちた。
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