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「な、何や! 気色悪いやっちゃな!」
そんな僕の姿を見て、チンピラは少し怯んだようだった。
僕は左手を地面に突っ張って、何とか上半身だけを起こした。
痛い。右足が裂けたように痛い。いびつに折れ曲がった自分の右足を見て、痛みがさらに増した。
「もう、許してください」
「ワ、ワシは何もやってへん!」
チンピラは一度下ろした拳銃を再び構え直して、僕の方に向けた。
「こんなんでは腹の虫が治まらん! やっぱり死んで貰うで!」
『ポキリ』
今度は体重を支えていた左手が、僕の代わりに悲鳴を上げた。そして、またも僕は地面に伏した。
頬に当たるタイルが、ひんやりと冷たい。地面に顔を突っ伏した僕は、満足に声を出す事も出来なかった。
「ぐえええ……!」
「ひいっ!? バ、バケモン!」
左手と右足を捻曲げながら奇声を上げる僕を、チンピラは『バケモン』と形容した。
「ち、違ひゅる」
『違う』の三言すらまともに言えない。
「ち、『ちがひゅる』!? や、やっぱりワレ、バケモンやな!? それは、ワシを呪い殺す呪文やなっ!」
チンピラは一人で勝手にうろたえ始めた。
「ち、違ひゅる」
「うわぁっ! 堪忍してぇっ!」
チンピラは拳銃を放り出し、猛ダッシュでどこかへ逃げ去る。
置き去りにされた拳銃を見つめながら、僕はゆっくりと意識を失っていった。
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