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気まずい沈黙が流れる。
「あがっ!」
「ど、どうしたんですか?」
女の子は心配そうに、僕の体に手を触れた。包帯の上から、柔らかい感触が伝わってくる。
「あぐあっ!」
痛い。全身がくまなく痛い。
緊張のせいなのか、触れられた箇所を痛めているせいなのか、もはや僕には分からなかった。
「わ、悪いけど今日はもう帰ってくれないかな」
「は、はいっ! 長居してごめんなさいっ!」
先生に叱られた生徒のような返事をして、女の子はベッドから離れた。女の子の姿は、すぐに僕の視界から消えた。
カツカツと床を歩く音。
その音がピタリと止まった。
「また、お邪魔してもいいですか?」
僕の答えに選択肢はなかった。
「あぁ、喜んで」
再開した足音は、いつのまにかスキップに変わっていた。
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