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「……いつ退院できますか」
僕は出来るだけ不機嫌そうに質問した。
「そうだね、三ヶ月は絶対安静だな」
三ヶ月か。長いなあ。
「会社に連絡を入れておくといい。あと、生命保険会社にもな」
なるほど。名案だ。
「では、私はこれで失礼するよ。何かあればナースコールを使いたまえ」
スリッパをペタペタと鳴らしながら、先生は病室を去った。
僕は辛うじて動く右手で、さっそくナースコールを押した。
看護婦さんはすぐにやってきた。
「どこか具合でも?」
「いや、ちょっとお願いがあるんだ。そこに引っ掛けてあるスーツのポケットから、メモ帳を出してほしい」
看護婦さんはポケットをゴソゴソとまさぐり、メモ帳を探し当てた。
「ありました」
「そこに『会社と生命保険会社に連絡』と書いておいて下さい」
「すでに『生命保険に加入』と書かれておりますが」
「それは消してもいいです」
「分かりました」
看護婦さんはスラスラとメモを書いた。
「『医師連盟に苦情』とありますが、これは」
僕は少し考えて答えた。
「二重丸で囲んでおいて下さい」
看護婦さんは変な顔をしながらも、指示通りにメモを書いてくれた。
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