骨折6

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僕の骨折は、左手と右足の治療を残すのみにまで快復した。 律儀な彼女は、ほとんど毎日、僕のお見舞いに来てくれた。 いつも制服を着ているのは、下校の途中だからだそうだ。つまり学校が終わるとすぐに、僕の所へ来てくれるのだ。 「でね、そこで医者がこう言うの。『そんな刺激の強いものはことにいかん』って」 「ははは。いいセリフだね」 今日も僕たちは、いつも通り小説の話題で盛り上がった。 初めのうちは、彼女が来るたびに緊張して骨折し、入院が長引くんじゃないかとヒヤヒヤした。 でも、よそよそしかった言葉遣いも、いつのまにか親しげになり、軽口すら言い合えるようになった。 『気が合う』というのは、まさにこういう事を言うのだな。もし僕が国語辞典の監修者だったら、『気が合う』の意味の欄に『僕と彼女の事』ときっと書くだろう。 「あっ」 「どうかした?」 「ううん。ちょっと目眩がしただけ」 少し彼女の顔色が悪いように見えた。そりゃそうかもしれない。学校だって行かなきゃならないし、友達との付き合いもあるだろう。 僕は彼女を束縛しているような気がして、申し訳なさと嬉しさがごちゃ混ぜになった。 「疲れているなら、こんなに頻繁に来なくていいよ」 「いいの、私が来たいだけだから」 「でも学校とか、友達付き合いとか、色々あるだろう?」 彼女は少し黙ってから、言葉を発した。 「学校なんかつまらない。友達なんて一人も、いない」
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