骨折6

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よりによって一番会いたくない奴が来るなんて。僕は今にも泣きそうな顔を必死で隠した。 「……振られるも何も、付き合ってすらいませんよ」 「そうか。看護婦の連中が噂するぐらい、仲良く見えたが」 ヤブ医者はアゴをポリポリ掻きながら続けた。 「『特異体質』の事、あの子は知っていたのかね」 「いえ」 知られたが最後、彼女に嫌われるのは目に見えていた。だから僕は伝える事が出来なかった。 「いくじがないな。そんなんじゃ、遅かれ早かれ振られるに決まっている。まぁ、知ったところで、あの子が受け入れてくれるかどうかは分からんがね」 僕は痛いところを突かれて動揺した。 そうだ、どっちにしろうまくいくはずがなかったんだ。 僕は、そういう運命の人間なんだ。
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