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なんてこった。人生お先真っ暗とはこの事だ。
「はぉっ!」
次は右の肋骨か。
「そ、そんな殺生な。何か手はないんですか?」
僕はすがるように先生に懇願した。
「ふむ……」
先生はポリポリとアゴを掻きながら続けた。
「さっきの診断で判明したんだが、『緊張の強さ』と『骨折の重さ』は比例するようだ。緊張が強ければ骨折は重くなり、緊張が弱ければ骨折も軽くなるんだ」
先生は話を続ける。
「つまり、あえて言うなら、なるべく脳を緊張させないようにするしかない」
「僕は会社員です。ストレス社会で戦う現代のサムライなんです。脳を緊張させないだなんて、無理に決まっています!」
「なら、諦めたまえ」
もっと言い方があるだろう、この野郎。僕は激しい憤りを覚えた。
「もう先生には頼りません。失礼します!」
「最後に一つ、いいかね」
僕は答えずに、先生の顔をキッと睨んだ。
「恐い顔をしないでくれ。これはかなり有益なアドバイスだよ」
「何ですか」
「生命保険会社をまわって、骨折に関わる保険にありったけ加入するんだ。どうだい、名案だろう」
なるほど。確かに名案だ。僕はメモ帳を取り出して、『保険に加入』と書いた。
それから少し考えて、『医師連盟に苦情』と書き加えておいた。
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