骨折1

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なんてこった。人生お先真っ暗とはこの事だ。 「はぉっ!」 次は右の肋骨か。 「そ、そんな殺生な。何か手はないんですか?」 僕はすがるように先生に懇願した。 「ふむ……」 先生はポリポリとアゴを掻きながら続けた。 「さっきの診断で判明したんだが、『緊張の強さ』と『骨折の重さ』は比例するようだ。緊張が強ければ骨折は重くなり、緊張が弱ければ骨折も軽くなるんだ」 先生は話を続ける。 「つまり、あえて言うなら、なるべく脳を緊張させないようにするしかない」 「僕は会社員です。ストレス社会で戦う現代のサムライなんです。脳を緊張させないだなんて、無理に決まっています!」 「なら、諦めたまえ」 もっと言い方があるだろう、この野郎。僕は激しい憤りを覚えた。 「もう先生には頼りません。失礼します!」 「最後に一つ、いいかね」 僕は答えずに、先生の顔をキッと睨んだ。 「恐い顔をしないでくれ。これはかなり有益なアドバイスだよ」 「何ですか」 「生命保険会社をまわって、骨折に関わる保険にありったけ加入するんだ。どうだい、名案だろう」 なるほど。確かに名案だ。僕はメモ帳を取り出して、『保険に加入』と書いた。 それから少し考えて、『医師連盟に苦情』と書き加えておいた。
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