骨折7

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今日は退院の日。僕はあのヤブ医者の元へ、最後の挨拶に訪れた。 こんな奴でも、一応面倒を見てくれた恩人だ。こういう事はキッチリしておかなければならない。 「振られたショックからは立ち直ったかね」 やっぱり来るんじゃなかった。僕は踵を返して帰ろうとした。 「お、おい。待ちなさ……うおっ」 僕を止めようとして椅子を立ったヤブ医者は、足をもつれさせてすっ転んだ。 いい気味だ。 「大丈夫ですか」 僕は心にもないことをしれっと言った。 「ああ。少し風邪気味でね、頭がボーッとするんだ。……ゴホゴホ」 ヤブ医者はわざとらしく咳をした。 病気の医者なんて最低だし、それを患者の前で見せ付けるような奴は、もっと最低だと思った。 「何を怒っている」 僕は怒りを隠そうともしなかった。 「どうも私は、嫌われているようだな」 今頃気付いたのか。悪怯れもしないヤブ医者の顔を見ていると、胸がムカムカした。 「では、嫌われついでに言っておこうか。君があの子に振られたのは、私のせいだ」
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