骨折7

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「何ですって?」 僕の声は思わず上ずった。 「あの子が去った次の日。実はあの子は、もう一度だけ、この病院を訪れた」 初耳だった。僕は食い入るように続きを聞いた。 「また君に会いたいなんて言うから、教えてやったんだ。君の『特異体質』の事をね。そしたらあの子は、何も言わずに帰っていったよ」 僕は全身の毛穴がザワザワと開いた。 「深入りしたって、君は幸せになんかなれっこないんだ。傷は浅いうちに塞いでおいた方がいい。医者として当然の措置だよ、これは」 僕は右手で強く握りこぶしを作った。そして左手でヤブ医者の胸ぐらを掴んだ。 「殴るのかね。私を」 ヤブ医者の顔は妙に青ざめていた。情けない奴だ。 でも、僕は殴らなかった。殴ったからといって、何かが解決するわけじゃないからだ。 それに、彼女の事はもう諦めたんだ。むしろ最後のトドメを刺してくれた事を、感謝すべきだろう。 僕は掴んだ胸ぐらをゆっくりと離してから、握ったこぶしを緩めた。
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