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闇に包まれた商店街のど真ん中を、僕と上司が闊歩する。
すると前方から、肩をいからせて偉そうに歩く人影が近付いてきた。
上司は急に酔いが覚めたような顔になり、道の隅っこにぴゅっと逃げる。
僕は逃げずに、その人影と向かい合った。
「何やワレ。そこ、どかんかい」
「嫌だね」
上司が隅っこで『早く逃げろ』とジェスチャーしたが、僕は無視した。
「しばくぞ!」
今にも殴られそうになった時、僕は魔法の言葉を使った。
「『ちがひゅる』」
「あぁ?」
人影の動きがぴたりと止まる。僕はおかしくなって、もう一度その言葉を口に出した。
「『ちがひゅる』」
「……何言うとんねん。アホが!」
視界が一瞬暗くなる。
世界に光が戻った時、地面は僕の右側にあった。
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