骨折10

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僕は二階にある彼女の部屋に連れてこられた。 部屋だけでなく、家全体がしんと静まり返っている。 「ご両親は」 「パパは仕事。ママはたぶん買い物」 彼女は机の引き出しをゴソゴソと探りながら、短く答えた。 「……あったわ」 彼女が取り出したのは、何と拳銃だった。 「そんなものを、どこで」 「あなたと出会った日。人を呼んで駆け付けたら、あなたのそばに落ちていたの」 あのチンピラが放り投げたやつか。 「たぶん、あのチンピラが落としていったんでしょう? なら、恐らく本物だわ」 彼女は拳銃を握ったまま、ゆっくりと僕の背後に回る。 そして、僕の背中にぎゅっと抱き付いた。 「弾が一発しか入っていないかもしれないから、こうして体をくっつけて、一緒に心臓を撃つの」 「心臓を」 僕は彼女の言葉を復唱した。 僕は膝を床に着けて、ひざまずいた。彼女より背が高いので、立ったままでは心臓の位置がズレてしまうからだ。 そして彼女は、僕の背中に覆いかぶさった。 背中でおっぱいの感触を感じる。 僕はとても冷静だった。 「僕が撃つよ」 女の子の力では狙いを外すかもしれない。彼女は僕の右手に、拳銃を渡した。 撃鉄を起こし、拳銃を逆さに握って、銃口を左胸に当てる。 親指を引き金に添え、僕は目をつむった。 彼女もたぶん、同じ事をしているはずだ。 「また会おうね。こことはきっと違う、幸せな世界で」 彼女はそう言った。
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