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僕は死ぬ。
いや、僕たちは死ぬ。
僕たちは。
僕たちは……!
『バキバキッ』
「うぎゃあぁっ!」
拳銃を持っていた右腕が、肘のあたりで二つに折れた。握力を失った右手から拳銃が滑り落ち、床にゴトリと転がる。
「……なっ、何をしようとしていた……」
「え?」
僕はくるりと後ろに振り返り、彼女と向かい合った。
「僕は今、何をしようとしていたっ!」
「えっ? えっと、自殺を……」
そうだ、自殺だ。取り返しのつかない事をしてしまうところだった。
僕は……いや、僕たちは、この不幸な境遇に酔っていた。自らを、悲劇の主人公に仕立て上げてしまったのだ。
「ぐがっ!」
僕に冷静さを取り戻させたのは、この痛みだった。憎んでも憎みきれない不幸の元凶が、僕たちを救ったのだ。
僕は生まれて初めて、このにっくき『悪友』に心から感謝した。
「だめだっ!」
「はっ、はいっ!」
いきなり怒鳴る僕に、彼女はわけも分からず返事をした。
「だめだ、だめだ、だめだ、だめだっ!」
僕はあらゆるものに対して怒った。
引き金を引こうとした自分、一緒に死のうと言った彼女、人生の失敗を全て『特異体質』のせいにしようとした自分、幸せの意味すら知らずに『特異体質』から逃げ出そうとした彼女。
……その他、あまり関係のないものに対しても、僕は半ばヤケクソ気味に怒鳴り散らした。
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