骨折11

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僕は大きく深呼吸をしてから、静かに話し始めた。 「さっき君は『幸せな世界で会おう』って言ったけど、そこはどんな世界?」 「……分からないけど、たぶん絵本に描かれた天国みたいな世界だと思う」 「そんなのはだめだっ!」 「な、何でよっ!」 彼女は少しムッとしたようだった。 「どうせその世界には、山とか、川とか、海とか、雲の上とか、そんなものしかないんだ!」 「素敵じゃない。雲の上とか」 「く、雲の上は確かに素敵だ!」 ちくしょう、『海』で止めておけばよかった。 「で、でも、他は全然素敵じゃない! ありふれたものばかりだ! 僕はこの世界で、君と行きたい所がたくさんある! 本屋に、映画館に、遊園地に、レストランに、キャンプに、海水浴に」 「最後の二つは天国でも出来そうよ」 「じゃ、じゃあその二つは取り消す!」 いかん。冷静になれ。 僕はもう一度大きく深呼吸をした。 「……つまり、何が言いたいのかというと、僕は死にたくないって事。もちろん、君も死なせやしない」 「……でも私は、幸せになると、体が弱くなって死んじゃうから……」 彼女は泣きそうな顔で呟いた。 そう、そこだ。そこを解決しないと、前には進めない。 僕は覚悟を決めて語り始めた。
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