骨折11

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「幸せって何だと思う?」 「え、えーっと……」 彼女は言葉に詰まる。まぁ、こんな質問では当たり前だろう。 「じゃあ、君の両親は幸せ?」 「た、たぶん」 「一分一秒が全て?」 「そ、そこまでじゃないけど……。でも連休で外出する時とか、何かの記念日とかは、いつも幸せそうだわ」 彼女は頭の中を整理しながら、丁寧に話してくれた。 彼女も冷静さを取り戻し始めたようだ。 「そう。一分一秒が常に幸せな奴なんて、いないんだ。幸せっていうのは、何の刺激もない日常生活の中で、ごくたまにしみじみと感じるものなんだ」 僕はたたみかけるように彼女を諭し続けた。その様子はさながら、教祖様と信者の姿を彷彿とさせた。 「君は『脳が幸せを感じると免疫力が下がる』んだろう? じゃあ言い方を変えれば『脳が幸せを感じた時だけ免疫力が下がる』んじゃないのか?」 「そう……かも」 「月に数回あるかないかの『幸せ』にビクビクして、人生を棒に振るなんてバカげてると思わないかい?」 「……でも、それは夫婦に限った事であって」 「じゃあ、結婚しよう」 彼女はキョトンと目を丸くした。 僕も、勢い半分で言ってしまった自分に驚いた。 もちろん、もう半分は本気だが。 「結婚すれば、些細な幸せなんかすぐに感じなくなるさ」 「でも私は、あなたがいるだけで……幸せ」 僕は、彼女を抱き締めたくなる衝動を、必死で押さえながら続けた。
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