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僕はまた、あの病院に入院するはめになった。もちろん、両腕の骨折を治療するためだ。
そして今日も、やっぱり彼女はお見舞いに来てくれた。服装は、やはりいつもの制服だった。
「……ほれにしても、何れ拳銃なんか拾ったんらい?」
僕は、彼女が切ってくれたリンゴを食べながら、ふと聞いてみた。
「お行儀悪い」
彼女が口を尖らせて注意する。僕は口の中のリンゴを噛み砕いて飲み込んだ。
「警察に届けようと思って拾ったの。でも……」
「でも?」
「あなたのお見舞いに夢中で、忘れちゃった」
「……そっか」
彼女はつまようじで刺したリンゴを、僕の口の前に差し出した。
両手がギプスで固定されているので、僕はアゴを少し突き出して、パクリとそれを食べる。
「ひゃあもう一つ、聞いていいはな?」
「お行儀悪いってば」
また彼女が注意する。でも、それほど怒っている感じはしない。
僕は口の中のリンゴがなくなったのを確認してから、喋り始めた。
「僕と君の『特異体質』を同時に知った時、どう思った?」
僕は自分の『特異体質』を知ってから、彼女の『特異体質』を知るまでに、数ヵ月間の空白があった。
でも彼女は、同時に知ってしまったのだ。
その時のショックは、僕のそれとは比べものにならなかったはずだ。
聞いてはいけない気もしたけど、僕はとても興味があった。
「それ、先生に聞いたの?」
「う、うん」
「ふーん。先生ったら、嘘をついたのね」
「え?」
どういう事だろう。
僕は、彼女の次の言葉を待った。
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