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「『同時に知った』っていうのは嘘。私があなたの『特異体質』を知ったのは、あなたに突き飛ばされた次の日よ」
「それは先生から聞いたよ。……じゃあ、自分の『特異体質』を知ったのはいつ?」
「それは、あの日よりずっと前の日。お見舞いに来始めて、間もない頃だったわ」
そうだったのか。
じゃあ僕と同じく、まず自分の『特異体質』を知ったって事になるな。
……ん?
「な、ならもっと早くに、僕の元から去る事も出来たんじゃないか?」
彼女は少し苦笑いをする。
「そうね。でも最初は、自分の体なんかどうでもよかったの。もちろん恐かったけど、幸せなまま死ねるなら本望かな……って、そう思っていたわ」
「じゃ、じゃあ、僕の元から去る事を決めた、最大のきっかけは」
「あなたの『特異体質』を知った事、よ。そばに居るだけで、大好きな人がボロボロになってしまうなんて、私には耐えられなかった」
何てこった。
じゃあ僕の『特異体質』が、彼女にトドメを刺したようなもんだ。
「……ごめん」
僕は彼女に謝った。そうしなければ気が済まなかったからだ。
「あなたが謝る事じゃないわ」
彼女は優しく微笑んだ。
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