感情伝染

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でもうさぎの赤ちゃんのお墓が気になって遠くまで行けない。 「が、学校には先生とかしか入っちゃ駄目…なんですよっ」 震える声でそう言う。 男の人は首をかしげて、少し笑った。 「ごめんな、怖がらせてしもた? そういうつもりやなかったんやけど…。 あ、僕はキョウ言うねん」 言いながら、男の人はうさぎの赤ちゃんのお墓に触れる。 あたしは壊されるのかと思ってぎゅっと目をつぶった。 …でも男の人は、ただそっと盛り上がった土を撫でてるだけだった。 「大事にしてもろたんやねぇ」 にこにこと、笑いながらそういって、あたしの方にも笑顔を向けた。 その笑顔は怖くなくて、あたしはきょとんとする。 「お嬢ちゃんやねやろ?世話してたん」 「あ…」 あたしは赤ちゃんのことを思い出して涙を浮かべた。 世話係だった…ずっと世話してた…でも死なせちゃった…。 「ありがとうって」 「え…?」 あたしは、びっくりして目を見開く。 男の人は笑いながら言った。 「気持ち悪いって言わんと、ここに埋めてくれて、花も供えてくれた。 それが嬉しいって、ありがとうって」 「な、なん…」 あたしはびっくりしてわけが解らなくなった。 まるでうさぎの赤ちゃんが言ってるみたいだと思った。 そんなのこの人が…お兄さんが勝手に言ってるだけに決まってるのに。 まるでうさぎの赤ちゃんが言ってくれてるみたいで。 そうだったら嬉しいのにって思っちゃったりもする。 でも…でも…。 「でも…助け、て、あげられなっ…」 しゃくりあげて言葉が途切れる。 涙が後から後から出てくる。 いじめられてたうさぎの赤ちゃん。 気付けば良かった、守ってあげれば良かった。 いじめられてた小さな命…。
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