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さっきまで悩んでいたのが嘘かのように、茜は中へいそいそと入る。
店内は資料や本が山のように積み上げられ、壁には日付の違うカレンダーや、時間の狂った時計が数多く取り付けられていた。
何て言うか……怪しすぎ?
茜は苦笑いしつつ、少年に疑問をぶつけた。
「あの……、このお店は具体的には何するの?」
同年代に見える為、つい、友達と話す口調になってしまう。
少年はそんな茜の口調など気にする様子もなく、事務的に、淡々と言葉を紡いだ。
「ここの店は、前世の記憶、思い出せない記憶、逆に忘れたい記憶など、記憶にまつわる全ての事柄を売買しています」
「記憶の売買……そんな事出来るの?あ、出来るからこのお店やってるんだよね」
ブツブツと自問自答する茜。
少年はその様子を眺め、ふと口を開いた。
「相談、聞きますよ?何かあるから、わざわざこんな辺鄙な場所を訪れたのでしょう?」
問い掛けた少年を、茜は驚いた表情で見やった。
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