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ハイテンション気味で扉を出る茜の背中を見つめた。
――瞬間記憶能力者か……
埋もれている椅子を引き出し、自嘲気味の笑いを浮かべた。
(あの子には悪いけど、全ての記憶を残すその能力は正直羨ましい……。他の人が昔の話するのさえ羨ましいと感じるのだから)
蛍には昔の記憶が全く無い。
住所や家族だけでなく名前すら思い出せないので厄介である。
溜め息をつきながら机上のペンをインク坪に浸し、紙にさらさらと文字を綴った。
『みやざき あかね
瞬間記憶能力者
依頼内容・犯人の捜索』
書いた文字に目を走らせファイルに挟んだ。
「瞬間記憶能力者か……。面白そうな能力だよね。朝って言うのは嫌だけど楽しみだな」
ひとり呟やき、ペンを置いた。
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