―記憶屋―

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朝早いので、風が吹かなくてもかなり寒い。 茜は昨日宣言した通り、明朝記憶屋を訪れていた。 コンコンと何度も扉を叩いても中から返事は返ってこない。 「勝手に入っちゃいますよー……。知らないですよー……ってか、普通鍵閉まってるよね?」 ハハと笑いながらドアノブを捻ると、ガチャリと音をたてて扉は開いた。 不用心だなぁ、とぼやきながら中に入る。 中は冷え切っていて、人がいるようには感じられない。 とその時、部屋の隅から寝息が聞こえたので、そちらへ足を運んだ。 「寝てるし……」 隅には机があり、そこに蛍がつっぷしてすうすうと寝息をたてていた。 ちゃっかりと毛布まで羽織っている。 それを見た茜は問答無用に叩き起こした。
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