―邂逅―

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過去を思い出した茜は、一瞬ギュッと目を瞑ると、真剣な顔をして少年に尋ねた。 「……両親を殺した犯人を捜し出す事は出来ますか?犯人の後ろ姿は見たから、ばっちり記憶は残ってるんだけど……」 「ばっちり……?そんな最近の出来事なんですか?」 「何て言うか……私、瞬間記憶能力者なの。一度見たりしたものは忘れないって能力なんだけど……知ってる?」 少年は軽く頷き、話の続きを促す。 「犯人の顔は見てないけど、後ろ姿を見れば、その人が犯人かどうか絶対に分かる……」 声が震え、茜の瞳から涙が滲み出してくる。 そして、茜は辛いモノを吐き出すように叫ぶ。 「お願いします!絶対に両親を殺した犯人を捕まえたいの!!だから力を貸して……!」 聞いている方が苦しくなるような声に耳を傾けていた少年は、沈黙したまま静かに目を伏せる。 しんと静まり返った店の中は、茜の啜り泣く声だけが響いていた。
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